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好きなだけ食べてこそ「バイキング」 [愛しの利用者さん達]

老健の利用者さんたちは
施設の外に出るという事が殆ど無い。
一種、閉鎖された限られたこの空間で
生活していく事を余儀なくされている。
どんな人間でも 刺激の無い毎日を
ただ漠然とすごしているだけでは
脳も使われる事無く どんどんボケていってしまうだろう。

だから私達は考える。
今日は何をしようか。
毎日のレクリエーション以外に
利用者さんに楽しんでもらえる事。
外に出る事が少ない利用者さんたちに
少しでも刺激のある生活をしてもらいたいから。。。

去年から 栄養課と組んで行なっている
バイキングもその一つ。
食事のバイキングは勿論、
おやつ・デザートのバイキングも試行し好評だったために 
今では年6回ほどの定例行事となっている。
料理の献立を考えたり、事前準備などで
栄養課の苦労は大変なものだが、
それでも喜んでくれる利用者さんの笑顔を見てると
次は屋台のおでんにしようか
マグロの解体ショーやりながら、おすしなんてどうなんて、
栄養士さん達に 無責任にも次の献立を提案してしまったりする。

バイキングの日だけは
糖尿病などで食事・カロリー制限をされている方達も
ある程度は制限解除となる。
(一応事前に医者をやっとの思いで説得して 了解を得てはいるので)
特にそんな方達が楽しそうに食材を選んで
食事をしている姿を見ていると
それだけで私達も嬉しくなる。
本当は 毎日好きなだけ食べ物を食べさせてあげたいけれど
病気が病気なだけに 
やっぱり完全フリーというわけには行かないのが現状だ。

先日 おやつバイキングを行なったが、
インスリン療法中の利用者さんで
気がつくと プチケーキを8個も平らげてしまったために
監視していたDr,にストップをかけられてしまった方がいた。
そのうちにやはり、食べすぎだというので
次々とストップをかけられていく利用者さんが増えていき
楽しい夢のような時間は30分程でおひらきとなった。
普通なら、バイキングといえば2時間ぐらいあるものではないか。
年に数回のバイキングなんだから、
もう少し制限をやわらかくして上げてもいいのに。。。

病院にいたときは そんな患者さんたちにうるさく食事指導し、
間食を見つけては叱ってしまうナースだった私も
老健の利用者さんに対しては
医者を敵にまわし
完全に利用者の味方になってしまった変なナースになっている。


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お疲れ様 [My Life]

天国と地獄が行ったり来たり
とっても めまぐるしかった今週。。。
記事を書こうという 余裕が持てなかったので
ずい分と間を空けてしまいました。
今日も夜勤明けですが
やっと全てが落ち着いたので 
帰ってきて即コレを書いているところです。

娘が高校受験のため
先週 2校 オープン入試を受けました。
本命は 偏差値ぎりぎりだったのですが
どうしても娘が行きたいというので
2年前から 家庭教師をお願いして
去年の暮れからは最終特訓なるものの
塾の講習を受けました。
勉強嫌いの我が娘がよく
ここまで頑張ったもんだと ちょっと驚きでした。
そして合否発表の月曜日。。。
滑り止めは受かっていましたが、
第一志望のY学院は不合格。。。
でも、ここの高校は 入試日程を二日間設けていて
発表の翌日が最後の入試日になっていました。
もし、1回目の試験がだめだったら、
2回目の入試も受けるつもりで
前日でも提出可能な願書を作成した上で
発表に臨んでいたので
その場で願書を提出し
火曜日の試験に賭けました。

不合格のショックに落ち込む間もなく
家に帰ってきてから また、受験勉強を始めた娘。
正直 私は9割がた無理だろうと思っていました。
1回目の試験は倍率4.6倍。
2回目は それ以上になる事が多い事が
去年までの例で分かっていましたから。。。

2回目の入試の日は 日勤だったので
朝、娘に 最後だから
力を出し切って頑張って来いと伝えました。
試験が終わってから 約4時間後、合否発表があり、
仕事を終えてから 電話した私は
娘からの嬉しい報告を聞く事が出来ました。
頑張って良かったね。
娘と電話口で話しながら、
お互い涙声になっていました。

娘の努力が報われた瞬間でした。
諦めないで再挑戦した娘に 
殊勲賞(?)を贈りたいと思います。
それと 娘を支えてくれた沢山の方々に
感謝の気持ちをこめて。。。
有難う御座いました。


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ある法則 [愛しの利用者さん達]

バイクに乗ってる時に ふと考える事がある。
メーターの針は どこまであがるんだろう。
ホントに時速180kなんて出るのかなぁ。
ちょっと出してみたい衝動にかられるが、
おまわりさんが怖いので 公道ではちょっと厳しい。
10kぐらいある直線のサーキットなら出せるんだろうなぁ。

そんな欲望とは裏腹に
ホントは事故が怖いので 最近滅多にスピードは出さない。
今 自分が事故ってしまったら、
たくさんの人に迷惑がかかってしまうし
家の中も荒れ放題になるのは軽く予想できる。
まして、死んでしまったりなんかして
ぐちゃぐちゃの更衣室のロッカー内を見られることだけは避けたい。
また、助かったとしても 介護が必要となってしまったら。。。
色々考えると怖くなるので
やっぱり スピードは出せない。

病院に勤務している頃 
その時も 完全看護が主流であったが
家族が介護をかってでるケースも多かった。
そんな家族を見ていて気づいた事。
年齢層が若い夫婦はさておき、
60代以降の夫婦にみられる共通した法則。
老健に勤めている今も その法則は崩れていない。

患者さん(利用者さん)が男性の場合
奥さんは 初めからそんなに頻繁には面会に来ない。
看護師を信頼して 任せて下さっているのだろうが
何かあっさりとしている感じである。
(勿論これは命に別状ない場合のみであるが。。。)

反対に 奥さんが入院している場合
必ず旦那さんは毎日のように面会にやってくる。
洗濯物も毎回持ち帰り きれいにたたんで持ってきてくれる。

ただ、老健では 女性の平均寿命が長いので
現在入所中の女性の利用者さんは
殆ど 旦那さんと死別されているケースが多く、
面会は 娘さんや息子さんが一般的。
しかし、ご主人が健在である場合
例外なく毎日のように 旦那さんは面会にみえる。

そこで、ホール内では
顔見知りとなった旦那さん同士が
仲良く談話する光景がよく見られる。
お互い奥さんの手を引き、一緒に散歩に行ったりもする。
愛されているんだなあ。。。と羨ましくなる。
高齢になると男性って まめになるものなんだろうか。。。

男性の利用者さんからは 
「妻に電話をかけてほしい。」
という訴えが多く聞かれる。
奥さんに会いたい一心で、脱走(?)を図った利用者さんもいた。
しかし、奥さんは殆ど面会に来ない。
この違いって何だろう?

自分が要介護状態になって 入所生活を送るようになったら
うちの旦那さんは こんな風に毎日来てくれるだろうか。
初の例外を作りそうなので
やっぱり旦那より先に要介護になるのは避けたい。
逆に 旦那が要介護になって施設に入ったら
出来るだけ会いに行きたいと思っているけど
この考え、一生変わらず持ち続けていけるかどうか。。。
ちょっと 不安だったりして。








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ちょっと やきもち [愛しの利用者さん達]

「今日 Kさんの態度が変だったんですよ。」
昨夜の夜勤中、相方のケアさんが
記録をしながら こう切り出した。
 変って ?
「この間までは 私のこと 名前で呼んでくれてたのに、
ちょっと、あなた、とか、あなたね、とかって呼ぶんです。」
 うんうん。
「何ていうか・・・。目も合わせてくれなくて。
私との間に 一線距離を置いているというか・・・。」
 あらあら。嫌われちゃった?
「私 Kさんに何かしたのかなぁって考えてみたんですけど
思いつかなくって。
でも、夕食後のトイレ介助のあと、ベッドから離れようとした時に
向こうを向いたまま Kさんが急にこう言ったんです。
『今日も彼氏と一緒に帰るの?』って。」
 へ?
「何の話だか 最初は分からなかったんですけど。」
そう言って 彼女は笑いをこらえる様にして 
口に手をあてながら話を続けた。

「3日前、N君と一緒に日勤だったんです。
仕事が終わったのが遅かったから
帰り 車で送ってくれるって言ってくれて。
それで甘えて 一緒に帰ることにして、
ふたりでドアから出ようとした時に
偶々Kさんが車椅子で通りかかったから
普通に ふたりで『さようなら~』って 挨拶して帰ったんです。
その事を思い出して・・・。」

 ???  それって・・・もしかして・・・。

「私とN君が 付き合っていると誤解したんじゃないでしょうか。
N君って 優しいし、ちょっとジャニーズ系でしょう。
Kさんも 息子のように慕っている感じだったから、
息子を想う母親のような気分で 心配して聞いてきたのかと思って。
だから、『彼氏なんかいませんよ~。それに今日は夜勤だから
朝までずっとここに居ますよ。』って答えたんですね。」
 ほうほう。そしたら?
「その時になって 初めて私の目をみて
『N君って恋人なんじゃないの?』って疑うように聞かれて。
やっぱりN君の事かぁ・・・って思いながら、
もう1回きちんと否定したんです。
そうしたら、『ふ~ん・・・、そう。』って。
そして、その後急に笑顔になってN君の悪口を言い出して・・・。」
???
「『あなたには あんなひょろひょろした男 勿体無いわ。』とか、
 『もっと しっかりした男がいいわよ。』とか・・・。」
 笑顔で、ですか。。。
「これって 学生時代に 友人と交わした会話に似てるって気づきました。
友人が好きだった男の子と私が仲良いいことに対して
友人が「カマ」をかけて聞いてきたっていう やりとりに。」
 ・・・。
「相手の事 こき降ろして、離れるように仕向けるっていうやり方。
単に 息子として可愛いとか、慕っているとかいうレベルじゃないみたいです。
あれは どう考えても 恋ですね。本気で好きなんだと思います。」

ー 開口 ー

一夜明けた今朝方、Kさんは
すっかり元のKさんに戻っていたとの事。
でも、やっぱり まだ疑っている様子で
又彼女に こう聞いたらしい。
『本当に N君とは何でもないの?』って。

何も知らないN君は 今日は日勤で来ていて、
そして N君の姿を眩しそうに見つめているKさんに
ナルほど・・・と思った私。

ケアの彼女は 28歳 (独身)
Kさんは 78歳 (旦那さんとは死別)
女という事で考えれば、対等なのかもしれない。

でも、私も結構 N君と仲良く話してたりするんだけどなぁ。
私に対しては 全然態度が普通のKさん。。。
これって 対象外ってこと? ;;









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大好きな人のそばへ [愛しの利用者さん達]

いつも ざわつく夕方のホール。
「迎えはいつ来るんだい?」
そんな質問が飛び交い、
スタッフに詰め寄る利用者さんが多い中
入所して まだ一ヶ月ほどのCさんだけ
窓の外を眺めているのに気づいた。

少し曲がった腰を伸ばし
遠くの何かを一心に見ている様子。
何を見てるのかしら?
ちょっぴり興味津々で
私は彼女の傍に寄ってみた。

何か見えますか?
私の問いに 彼女は少し照れたように答えた。
「主人があの施設に入ってまして・・・。」
彼女の視線をたどると
線路を挟んで 遠く向こう側に白い建物があるのが見えた。
特養(特別養護老人ホーム)だろうか?

ご存知の方も多いとは思うが
老健は利用者さんにとって終の棲家ではない。
入院するまでもないが
病状が安定するまでの間の
一時的なスティの場である。
リハビリを受けて ADL(日常生活動作)がupすれば
自宅に帰れる方もいる。
お子さんがいらっしゃらない為に 独居が困難と判断され
特養ホームの申請を出して 入居の順番を待っている方もいる。
ただ、特養は まだまだ絶対数が足りないために
順番を待って もう何年・・・という方は多い。

彼女は5人の子供に恵まれたが
5人とも親を看るつもりはないと聞いていた。
子供達もそれぞれの生活があり
自分たちの事で 精一杯なのだという。
子供達誰一人として 一緒に住もうとは言ってくれなかった。
それでも彼女は 子供たちのことを責める事もせず
「皆忙しいからね。お荷物にはなりたくないのよ。」
そう言って 彼女は自ら希望し ここへやってきた。
先に体調を悪くして 介護が必要となった夫と
一緒に住む終の棲家に行くために。

早く 旦那さんと一緒に住めるといいですね。
私の言葉に、彼女は
「でも 行ったら行ったで、
あの人の世話ばっかりで疲れちゃいそうね。」
と、わざと困った顔を作ってみせた。
何か可笑しくて その後ふたりで笑ってしまった。

そんな事を言ってはいるものの、
彼女はきっと直ぐにでも夫の傍に行きたいに違いない。

50年後、私は果たして 彼女のように
旦那の事を思ってあげられているだろうか。。。


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バイオハザード事件 [My Life]

バイオハザードというと、
CAPCONから出ている あのシリーズ物のGAME・・・
あれ、ゾンビが本当に怖くて
規制対象者に 心臓が弱い方も入れたほうがいいのでは・・・
と思ってしまう位 ドキッとする事が多いGAME。
でも 中々奥が深くて ストーリーが興味深いので
新しいのが出ると 即買いで
しばらくバイオハザードの世界に浸ってしまう日々。。。
CAPCONさん、早く「バイオ5」発売してください。

脱線してしまいました。

本題

そもそもバイオハザードとは、
 「微生物を取り扱う場合に発生する災害(生物災害)」
と、感染症新法のなかで定義付けられている。
世の中には 眼には見えていないだけで
様々な微生物がわんさと自分達の周りにいらっしゃる。
ウイルスや、カビ、細菌、ダニなど。。。
それぞれ生育環境や性質に若干違いがあるので
殺菌する方法も少し違ってきたりするのだが、
対象が何か 分かっている場合を除き
大抵の微生物に対して有効な対策をとっていくのが
医療関係者のスタンダードプリコーション。

医療施設では、入院してくる患者さん達一人一人が
何かに感染していないかどうか、
その全ての感染症の検査をしているわけではないので
全ての患者さんに対して 一律の対策をとっている。
(もしかしたら何かの感染症に罹患しているかもしれないと思って
疑ってかかっていたほうが後々安全)
つまり、汗を除く全ての湿性物質(血液・体液・唾液・尿・便・痰など)は
感染源として成り立つ事をふまえ、
それらに触れるかもしれないと考えられる時は 
手洗いは勿論、必要に応じ手袋や予防衣を着用して扱う。
そして、点滴や採血で使用した注射器などは
専用の医療廃棄ボックスがあって、そこに捨てなくてはならない。
傷跡を覆っていたガーゼなどもそこに捨てる。
針やメスなどは、よりグレードの高い専用の廃棄ボックスに捨てる。
それらの医療廃棄ボックスを総称して 
私達は バイオハザードボックスと呼んでいる。

昨夜、夜勤で出勤した時 
日報に 1枚の事故報告書が挟まれているのに気づいた。
事故内容は 針刺し事故。
ボックスに捨てる前に、
ナースが誤って自分の指などを刺してしまうことがある。
今回もそれか・・・と思ってよくよく読んでみると
刺してしまった今回の被害者は
意外にも 委託の清掃業者の方だった。

バイオハザードボックスは その性質上、
最後にふたを閉めて専用の業者に引き渡すことになっている。
その蓋は 一度閉めてしまったら、
絶対に二度と開かない仕組みになっている。
針に触れたということは、蓋を閉める前に
ボックスの中に手を突っ込んだという事だが、
誰が好き好んでそんなことをしたのか。。。?

原因は ここんとこうるさく叫ばれている ゴミの分別。
バイオハザードボックスは 大きさにもよるが、
一箱3万円~という値段で引き取ってもらってる。
だから、蓋を閉める前に丈夫な長靴などで
ぎゅうぎゅうに踏んで かさを減らして
詰め込むだけ詰め込んでから捨てている。
しかし、業者の人たちは その前に、
スタッフが使った紙マスクなどの
鼻に当たる部分についている金具は外側についているので
感染性が少ないものと判断し、
今までも はずして分別ゴミに分けていたとの事。
今回もそうやって 清掃の人が分別していた時に
本来なら 針専用のボックスに捨てられているべき針が
普通の医療廃棄ボックスに捨てられていたために
起こってしまったという
スタッフのミスも明らかになった事故だった。

おかげさまで 申し送り後 看護科長からナース全員
さんざんな長いお小言を聞く羽目になってしまった。
確かに 誤って針を捨ててしまったナースも悪いとは思う。
しかし、いくら感染性が低いとはいえ 医療廃棄物の中に手を入れて 
ゴミをより分けている業者の方法もおかしいのではないか。
そう言って反論した私の主張は
基本を守らない者の言い訳ととられ、
さらに科長の怒りを増す原因になってしまった。
基本の見直しレポート提出という課題まで渡され
釈然としないまま 夜勤明けでレポートを書き上げてきた。
昨日は節分。
恵方巻き食べていったのに その御利益はどこへ?



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天使が居る病院 [愛しの利用者さん達]

今日は 久し振りに救急車に乗った。
高熱が出て、肺炎の疑いのある利用者さんを乗せて
一般病院に受診しにいくためである。

老健で出来る治療には限界がある。
体調不良で 食事も飲水も出来なくなってしまい
点滴が必要となったら 転院のレベルである。
そこで、老健の医者は
地域の受け入れてくれる病院を探して電話をかけまくる。

今日も 朝から体調が悪くなった利用者さんを みてもらえる病院を探し、
主治医は 電話帳を片手に受話器を握りっぱなしであった。
勿論、受診するだけではなく、
入院が必要と判断されたら 
そのまま入院させてくれる病院でなければならない。

だが、現実は 断られる事が圧倒的に多く、
受け入れてくれる病院は本当に珍しい。
理由は一つ。
認知症症状があるから。

だから受け入れ先が決まると
私達は安堵と同時に その病院が神様のように思えてくる。
救急車に乗るのも足取り軽く、
(ホントは家族もいるので神妙な面持ちでいるのだが、
内心はとっても嬉しいので)
これでやっと助けてもらえると
安心して その素晴らしい病院に向かうのである。

今日の利用者さんは 脱水も起こしていたので
そのまましばらく入院する事になった。
もうすぐ夕方になるという 忙しい時間帯でもあったはずだが
外来の看護師さんも、病棟の看護師さんも
皆 笑顔で親切に患者さんを迎え入れてくれた。
そして、「1週間もすれば元気になるでしょう、
ほかに具合が悪い方などはいらっしゃいませんか?」
と、老健のほかの利用者さんの心配までしてくださった。
ここには本当に天使が居る。。。感無量であった。

きっと、これで元気になって帰ってきてくれるだろう。
病棟のナースに申し送りを済ませ、
職場に1人タクシーで帰る私の心は晴れやかだった。

かしこい患者は医療を選ぶ

かしこい患者は医療を選ぶ

  • 作者: 白岩 康夫
  • 出版社/メーカー: 悠飛社
  • 発売日: 2000/08
  • メディア: 単行本


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見逃しの代償 [愛しの利用者さん達]

熱が39.8度まで上昇した日曜日の夕方
当直医に診察を依頼し、解熱剤の指示をもらった。
体重40kg弱の小柄なおばあちゃんは
やっと悪寒が治まり、寝息をたてはじめていた。
血圧は120/ちょっとだったと思う。
これなら、解熱剤を使える。
もうすぐ楽になるからね。。。
そういいながら、私は彼女に座薬を使用した。

彼女の体は燃えるように熱かった。
このままだと、彼女が干からびてしまうような感じがした。
何か飲みますか?
私の問いに彼女は小さく頷いたので
ポカリスエットを 吸い飲みで少し飲ませてみた。
彼女はそれを二口程ゆっくり飲み込むと
水のみに添えていた私の手を触って「もういい」と呟いた。
そういえば
朝ご飯は半分ぐらい、昼は食欲が無いといって
殆ど食べられていなかった。
点滴でもしてもらった方がいいかもしれない。

風邪の症状は無かった。
尿路感染でも起こしたのだろうか・・・。

30分後、体温は38℃まで下がっていた。
血圧は 上が92/だった。
いつもの彼女の血圧から考えると低い感じがしたが
座薬を使用したので少し下がったのだろうと解釈し
ケアさんに彼女を頼んで 私は申し送りの準備に入った。
私が 彼女から離れて 
申し送りを終えて 又彼女の元に戻るまでの間
その間約30分。
申し送り後、何故か すぐ彼女の元に急いで行かなければという
焦燥感が 私をおそった。
彼女は壁側を向いて 布団の中で丸くなっていた。
私は彼女の名前を呼んだ。
顔を覗き込んで もう一度彼女の名前を呼んでみた。
そして気づいた。
彼女が呼吸をしていない事に。

その後は慌しく時間が過ぎていった。
当直医を呼び、心臓マッサージに挿管、
彼女を蘇生しようと 私達は必死だった。
せめて家族が到着するまで、
もちこたえて欲しいと願って。。。

しかし、彼女は家族が来る前に
そのまま帰らぬ人となってしまった。
医師が書いた 死亡診断書の死因の病名は 心筋梗塞であった。
はたして そうだったのか。
医者達も悩みながらつけた病名だった。

様々な科を経験してきた。
色んな症例や急変も見て、予測や対応には 少し自信があった。
そんな私のちゃちな自信は
彼女の一件で ぼろぼろに崩れ去った。
あの時、血圧が気になっていたはずなのに、
何故彼女の元を離れてしまったのか。
座薬のせいだと 決め付けずに
もっと観察しなければならなかったはずなのに。

3年経った今も 時折夢に見る
取り返しの付かない見逃しをしてしまった
私の一生物の後悔。


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恐怖の夕方 [愛しの利用者さん達]

夕方の5時近くなると 
そわそわ うろうろと落ち着かなくなるホールの雰囲気。
それまで落ち着いていた利用者さんたちが
1人2人と立ち上がり、おもむろに歩きだす。

どちらへ行かれるんですか?
「えぇ、ちょっとそこまで・・・。」
お手洗いですか?
「いえ、あの・・・暗くなる前に帰ろうかと思って。」
(うーん・・・。困った。)
大丈夫ですよ。お家の方には今日泊まることになっているので
その旨 ちゃんと連絡してありますよ。
「でも・・・ご迷惑ですし・・・。明日又来ますから。」

本人はどうしても帰りたいらしい。
壁掛けの時計を見上げて もう私の話など耳に入ってはいない様子。

お1人で帰るのは大変ですよ。
明日になったら お嫁さんに電話して迎えに来てもらいますから。
お夕飯も 明日の朝ごはんももう注文してありますし。
「でも、私、お財布忘れてきちゃって。」
(そうなんですよね。お金の心配する方がホントに多い。)
ご心配要りません。
ここは市の施設なので、65歳以上の方は全て無料になってます。
だから、安心してください。
(最後の切り札。ほんとは自己負担ありますが。。。)
「あ、そうなんですか。じゃあ、今晩だけ。ご厄介になります。」

毎日夕方 ホールのあちこちで繰り広げられる
利用者さんたちとの そんな会話。
大抵の方達は これで渋々ながらも納得してくれる人が多い。
が、
中には スタッフの聞く耳持たず、
終いには怒り出してしまう方も居る。
また、自分は捨てられてしまったと思い込み、
泣き出してしまう利用者さんもいたり。。。

そんな利用者さんの不安電波は
ホール中のほかの利用者さんにも広がり、
我も我もと 荷物を片付け始めたり トイレに並んだり・・・
夕食が来るまでの間 ずっとそれが続くのである。
スタッフが傍でずっと話を聞いてあげられたら一番いいのだが
何しろ相手の人数が多すぎる。
夕方だけでも 話し相手になってくれる
ボランティアさん 来てくれないかなぁ。

しかし、そんな利用者さんたちの帰宅欲求が
殆ど 聞かれない日も存在する。
それは、台風がきていたり、大雪・大雨の悪天候日。
1人ぐらいは帰りたいコールを訴える利用者さんも居たりするのだが、
窓の外を指差し、
今日は バスも電車も運休ですよ。
私達も今夜ここに泊まるんです。
という一言で、すぐに納得され 穏やかになってしまう。

日勤の日は 夕方だけでも大雨が降って欲しい・・・
と いつも密かに雨乞いをしている私である。



ブルーな気分を吹き飛ばす64の方法

ブルーな気分を吹き飛ばす64の方法

  • 作者: ヨランダ ネイブ
  • 出版社/メーカー: 新講社
  • 発売日: 2001/06
  • メディア: 単行本


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フリージアの「げんかつぎ」 [My Life]

今の時期は 受験一色。
明日からは 公立高校の前期選抜試験が行なわれる。
2月に入るとオープン入試目白押し。
各国家試験もこの時期に行なわれる事が多いだろう。
我が家の娘も 高校入試を来月に控え
まさに今 追い込みの時期にある。

今年の初詣は 天神様へお参り祈願。
私も 国家試験の前にはお世話になった。
お賽銭もちょっと奮発。合格必勝の絵馬も掲げてきた。
インフルエンザの予防接種も2回うった。
でも まだ何か足りないような気がする。
しばらく考えて思い出した大事なもの。
それは フリージアの花。

私が通った看護学校では 
卒業生の先輩から 
国家試験を控えた後輩一人一人に 
フリージアの花を贈る習慣があった。
前期の卒業生代表の何人かが この時期母校にやってきて
合格祈願と称し、自腹をきって買ってきてくれた
花を手渡ししてくれるのである。
フリージアの花言葉は 「勝利」
この習慣が始まってから
我が母校の卒業生は 1人も国家試験に落ちることなく
現役合格が続いているんだそう。
もう何十年も前から続けられているこの伝統行事は
今年 学校の統合により閉鎖される
この校舎最後の卒業生で終わりになるらしいと
同期の友人から聞いた。
チョット寂しい感じがする。

明日は 花屋さんに行って
フリージアの花 買ってこなくちゃ。


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