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吐血 [愛しの利用者さん達]

事件が起きたのは
朝の起床介助に追われる6時半ごろの事。

朝食前のインシュリンをうつ利用者さんは
常時3~4人ぐらいいる。
Kさんも その1人で
早番の看護師が出勤するまえに起床を促して
食堂手前の処置室にいつも待機してもらうのが
毎朝の日課だった。
そして
いつものように車椅子に移動してもらおうと
夜勤のケアさんが訪室した時
大量の黒い血液にまみれているKさんを発見したのである。

Kさんは、両上肢と腰椎の関節が拘縮していて
車椅子は専用の特殊なハイバック式を使用しており
勿論 トイレの便座にも座ることが出来ない方なので
オムツ交換で対応している方だった。
朝のオムツ交換は4時すぎから
夜勤者ふたりでいっせいに廻る。
Kさんのオムツ交換をしたのは大体4時半ごろ。
そのときはいつもと変わった様子はなかったらしい。
次々と起床する利用者さんたちのコールにおわれ
そのあとKさんを迎えに行くまで
その居室に訪室はしていなかった。
ナースコールを押せないKさんは
どんなに苦しかっただろうか。

発見したケアさんは
すぐにナースを呼びにいった。
ナースがDr.call後、Kさんの意識レベルを確認し、血圧を測る。
聴診では聞き取れず、触診でやっと上が60くらいだとわかった。
反応はかなり鈍く危険な状態であったため
すぐに救急車を要請。
そのままKさんは 救急病院へ搬送されることとなった。

その日 日勤で出勤した私は
すでに転院してしまったKさんのベッドを見て、
まるで殺人事件があったかのような出血のあとに
これはもうKさんは危ないんじゃないかと思った。
しかし、数時間後、家族からの電話で
何とか とりとめたという知らせを聞き、
皆でホッと安堵したのである。

その後、詳しい検査の結果
吐血の原因は、胃がんであったことが分かった。
癌は胃壁近くの動脈を巻き込み、
血管を破壊したのである。
それを聞いて私達はドキッとした。
Kさんの既往歴に胃がんはなかった。
食欲もあって、
食事は残さずに毎回全量摂取されていた。
しかし、若干貧血があったので
毎日鉄剤を服用されていた。
ご存知の方も多いと思うが
鉄剤を服用していると 便の色は黒っぽくなる。
1ヶ月ほど前に ケアさんが
「Kさんの便の色が黒いんですけど。。。」と
いってきた事があった。
その時の勤務していたナースは
「大丈夫よ。薬のせいだから。」と答えていた。
その後、その件について2,3日申し送りがあったが
私も特に気にせずに受け止めていた。

薬のせいではなかった。
もしかしたら そのときから胃の出血があったのではないか。
その場にいたナース全員 言葉が出なかった。

ケアさんに任せていることが多い日常介護。
直接観察する重要性を 身にしみて感じた事件であった。





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コメント 7

sasasa

う~ん、いろいろ難しいですね・・・という言葉で語るには、
あまりにも、自分がわかってなさすぎるのですが・・・。
その方も少しでもよくなればいいですね・・・。
by sasasa (2006-03-10 00:29) 

こんにちは!
改めて大変な仕事に感心させられました。これからも、がんばって下さいね!また、次の記事楽しみしています。
by (2006-03-10 12:13) 

tano

はじめまして。
介護士さんとは違うナースのお仕事の大変さが
よくわかりました。
うちの父もデイケアやショートステイで老健でお世話になっています。
どうか体に気を付けて 頑張ってくださいね^^
by tano (2006-03-11 01:17) 

みんみんみなみ

>sasasaさま
有難う御座います。^^とりあえず今の段階では大丈夫のようですが、まだ絶食中で、病院からこちらに復帰できるのは まだまだ先になりそうです。可愛いおばあちゃんなので早く戻ってきて欲しいですね。

>kazeさま
身内の恥をさらすようで かなり恥ずかしい話です。利用者さんと一緒に遊んで、お世話させてもらって。。。みたいな毎日だけだと楽しいんですけど。。。(こんな事書いたら医療関係者の方々からバンバンクレームきそう。)

>tanoさま
はじめまして。^^お気遣い有難う御座います。
老健って、病院とは又違う意味で やりがいがある楽しいところですよ。
まあ、こんな急変みたいな事にも遭遇する危険性は多々ありますが。
日々利用者さんと ふれあっていくうちに出会う様々な出来事を時折書いていきますので、お時間あるときでも覗いていってくださいね。
by みんみんみなみ (2006-03-13 16:50) 

正直、リハ病院では、看護師の中には、妻の意識レベルがなかなか上がってこない、むしろ低下しているのに、無理矢理食事を口に入れている方もいました。自分がもしかしてと指摘し、CTを撮ってもらうと、やはり水頭症の再発だったということもありました。危機というか容態の変化を察知する能力は、やはりプロとして高めていってほしいものですね。
ただ、様々な症状の方がいるなか、急変、ヒトの生死にかかわる事に直面し対応しなければいけない大変さは、サラリーマンの比ではないですね。
by (2006-03-13 22:15) 

さいがわ

命に関わる仕事は大変ですね。
病院で祖母に付き添ったときも母に付き添ったときも、医師も看護師も通り一遍の今年かやっていかなかったイメージでした。
私の目が節穴かもしれませんが。
母は病院をたらい回しにされて、かわいそうでした。
正解はないかもしれませんが、正解を求めて頑張っていただきたいです。
by さいがわ (2006-03-15 00:16) 

みんみんみなみ

>タケノコさま
意識レベルが低い時は嚥下能力も低下しています。無理に食事を食べさせる事は誤嚥させることにつながりますので、絶対に無理をしてはならない事です。でも、そんな看護師がいるとは驚きました。とても悲しい事です。もし、そんな看護師がいたら、管理職レベルの師長や、看護長にどんどん直訴していっていいと思います。私もプロとして恥ずかしくないように頑張らなくっちゃ。

>いいだやさま
私も、患者の家族の立場になった時、改めて病院って冷たいところだと感じた事があります。家族の不安を受け止められる看護師になろうと思ったのはそれからですね。今は、接遇を大事にする風潮で、昔と違って患者が病院・施設を選ぶ時代になりつつあります。お母様の事では悲しい思いをされてしまったと思いますが、そんな病院は生き残れなくなっていきますよ。いいだや様のような思いをする家族を作らないためにも、私も精一杯頑張ります!!
by みんみんみなみ (2006-03-19 18:56) 

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