夢はひとつ

利用者さんたちは
様々な趣味をもっている方が多い。
編み物、習字、水彩画、ちぎり絵、
カラオケ、読書、ペーパークラフト、etc...
女性の利用者さんは、もともと趣味を持っていたという人が多いが
男性の場合、入所してから始めたという場合が殆ど。
そんな中、ひときわ目立つ
素敵な男の利用者さんをご紹介。

入所されて1ヶ月のKさんは、68歳。
趣味はギターを弾くこと。
若い頃から　仕事の傍ら、バンドを組んでいて
最近まで　ライブなんかも時折やっていた
バリバリのギタリストだったらしい。
奥さん曰く、かなりの腕前で
昔　TVに出た事があったとか。。。

そんなKさんが倒れたのは
昨年の暮れ、クリスマスの頃。
バンド仲間と飲みに行った帰り、
電車のホームで　Kさんは急に意識を失い、
救急車で病院に搬送された。
原因は　脳梗塞。
搬送先の救急病院で一命をとりとめたわけだが
右半身に麻痺が残り、リハビリ病院に転院。
必死のリハビリの結果
杖歩行が出来るまでに回復し、
自宅の改修工事が終えるまでの間という期限付きで
当苑に入所する事になった。

ギブソンのギターを抱え、
毎日　彼は右手のリハビリをしている。
「まだ、指が思うように動かないんだよね。
これでも大分動くようになったんだけど。。。」
夕食後、利用者の退けた食堂の片隅で
毎晩聴こえるスローテンポのビートルズ。

「早く、家に帰りたいね。
やっぱり　ココじゃ、大きな音出せないし。
あと、バンドの仲間達が　待っててくれてるんだよね。
もう、半年以上経つっていうのに、
ギターまだ入れてないんだって言うんだよ。
治る保障はないぞって　言ってるんだけどね。」
時折まわらない口を直すかのように
頬を手で押さえながら、彼は話をする。
「やりたい事は　一杯あるけど・・・
でも、やっぱり　もう一度ライブしたいな。」

リハビリは長期に亘る大変な訓練である。
投げ出したくなったり
自暴自棄になったり
挫折しそうになった事もあるのではと思うが
彼は　そんな事を微塵も感じさせることがない。
夢を持っている人は
それだけで強くなれるのかもしれない。

巷で流行っている親父バンド。
彼のギターが又その中で
活躍する日が早く来ますように。

コメント 5

素敵な方ですね♪
いくつになっても夢を持ち続けるのって本当に素敵です。
そういう気持ちが、回復へつながるのかもしれませんね。
by sasasa (2006-06-06 00:53) 

元気な頃に、打ち込んでいる趣味がある方のほうが回復も早いような気がしますね。それ自体がリハビリ、脳の活性化にもなりますし、生き甲斐でもありますしね。自分もよく考えるとこれと言った人に自慢できるような趣味はないですね～。もし、じいさんになって施設の世話になったら、若いスタッフとカラオケざんまいと思っています＾＾）
by (2006-06-06 21:35) 

こんばんは！
素敵なお話ありがとうございます。生きる勇気をもらったような気がします。また、次回の記事も楽しみしています。
by (2006-06-06 21:55) 

お仕事大変ですね。
燃え尽きないように、がんばってください。
by スー (2006-06-08 16:00) 

>sasasaさま
ホントに素敵な方です。男の方って、夢を語っている時が一番格好いいかもしれません。誰の為でもなく、自分自身のために頑張るって意外と「しんどい」事だと思うのですが。。。60代・70代は、まだまだ若い！つくづく感じましたね。＾＾

＞タケノコさま
カラオケは続けていると、風邪引きにくくなるって、うちの医者が言ってましたよ。呼吸器を鍛えているからでしょうか。でも、タケノコさん、素敵な写真一杯撮ってるじゃありませんか。＾＾充分自慢できる趣味だと思いますよ。

＞ｋａｚｅさま
私も、頑張れる勇気を彼からもらったような気がします。Ｋさんが退所される前に一度ここの利用者さんの前で、一緒にセッションしましょうって約束させてしまいました。＾＾それを楽しみに現在曲を練習中です！！

＞スーさま
有難うございます。色々山あり谷ありで、何度か挫折も経験しましたが、やっぱりこの仕事を辞められないのは、こんな方との出会いがあるからなんですよね。燃え尽きる時は定年すぎてから。。。なんて思っていますが、御婆ちゃんでも雇ってくれるところを探して、やっぱりこの仕事にしがみついていそうな気がします。＾＾
by みんみんみなみ (2006-06-09 23:46)